悪いものは検疫を通れないから、空港から先には行けない。

2022年3月末、約10年間英語教材編集者として勤めた株式会社Z会を退職しました。

東日本大震災直後の2011年4月に入社してから早11年。

途中2017年に1年間のオーストラリア留学を挟み、曲がりなりにも10年、教育出版・サービス業に身を置き、入社動機であった「英語教材制作を通じて、全国各地の先生・生徒の役に立ちたい」という想いを形にできたのは一つの誇りになりました。

4月末に、オーストラリアのブリスベン(クイーンズランド州)へと引っ越し、パートナーとの生活を始める予定です。

遠距離になってから4年強、特に婚約直後からの2年半はコロナも相まって日豪間の行き来ができていませんでした。

「ドラマや映画みたい!」と言葉をくれる人もいます。確かに表面上、筋書きだけを追うとそれは美しいハッピーエンドなのかもしれません。ですが、リアルはその真逆でもっとずっとドロ臭い2年半でした。

婚約者ビザの長い待機期間(そして降りる保証もない)と複雑なプロセスに加え、今なお世界中を巻き込んでいるコロナ。自分達の意思や努力ではどうにもならなず、ただ現実を受け入れ適応するしかない状況下で、結婚の予定について都度問われることは「そんなんこっちが知りたいよ!」と叫びたくなるほど苦痛でした。「自分で選んだ道」と言い聞かせつつも、公私問わず、人様の結婚・出産の話を聞く度(自分事と切り離すスキル不足で)毎回無意識に涙してしまい、職場で育休・産休のメンバーのフォローをすることも重荷に感じてしまった時期もありました。ついには一時期、心身にガタが来て、休職に陥りもしました。

それでも、七転び八起きと言いますか、何とか踏ん張り続けて2022年の春を今、こうして元気に迎えられたことは、ひとえに、健やかなる時も病める時も寄り添い、励まし、支えてくれた(ってすでに結婚の誓いじゃないか!)職場の皆さん、同居の祖母、相方、友人・・・など、私の日常を取り巻くたくさんの方々のおかげだと心底思っています。

そんなこんなで、仕事も何とかひと段落し、ようやく行政の海外転出手続きやら、船便で送る荷物をまとめながら移住が現実味を帯びてきたところで、昔馴染みの友達に報告だけでも・・・と思い、作業の合間に連絡を入れてみました。

すると、

「そうなんだ!気をつけて行ってきてね!」
「長かったね。うちの子も大きくなったよ!」

・・・・

そりゃ、当たり前ですが、みんな自分の現実・日常で手一杯なのです。

わかっちゃいる、わかっちゃいるけど、私が20代の頃に祝い続けてきたのは・・・いや、女同士の友人関係なんてそんなもんだ・・でもなぁ・・とやるせない気持ちになっていた中、一人の旧友が電子ギフトと共にこんな言葉を贈ってくれました。

「卒業以来ほとんど会えていなかったけど、結婚式に来てくれたのがとても嬉しかったから。だからお礼は言わないで。」

彼女だって家事に育児に手一杯なはずだし、新学期で子供の出費だって大変だろうに・・・自分の小ささを恥じると共に、彼女の大人な振る舞いのスマートさがカッコよく、敬服し涙するばかりでした。

「人は変わっても制度は変わらないし、結局優しい人が割を食うんだよね。」

彼女も子供の学校のPTAとか、自治会とか、色々大変なことがあるのでしょう。色々本音を打ち明けるうちに、彼女の文面から、彼女が自身のことも含めて冷静・客観的に現実を捉えていること、それゆえに相手の心中を察せる人なんだろうということが、画面越しに伝わってきました。

「嫌なことは全部日本に置いていって。オーストラリアの検疫は厳しいって聞いてるよ。だから悪いものは何一つ空港から先には行けないさ!」



(キミの母ちゃん、言葉一つで友達を救えるほど、かっこいいんだぜ。)

おそらくもう赤ん坊から小学生ほどになっているであろう彼女の息子に、心の中でそっとつぶやきました。

スマートで心優しい、大人な彼女がこれからもどうかハッピーであり続けますように。

What is “matured” ?
– I’m still on the way. 

Ayaka