母と娘 幸せの相関関係

日本が梅雨入りを迎えた6月上旬、母に単身でオーストラリアに来てもらいました。
今回の目的はシドニー観光はもちろんですが、私の暮らすブリスベンでローカルな「オーストラリア生活」を体験してもらうことでした。
2017年に私が大学院留学中、妹同伴でブリスベンに遊びに来たことはあったものの、母にとってはこれが人生初(!)の単身海外渡航
英会話も入国審査も税関も不安だらけだったようですが、それでも思い切って飛行機に飛び乗ってくれた母に感謝です。

私がオーストラリアに移住して1年余り。自分ではパートナーと猫2匹との日々の暮らし、仕事や友人関係にも恵まれ大変満足してはいるものの「対母親」という点でどこか100%の自信を持ちきれない自分がいました。

「母は本当は、実家から気軽に行ける距離で、結婚し子ども産んで欲しかったのでは?」つまり「自分と同じような道を歩んで欲しかったのでは?」というわだかまりが心の中にあったから。

概ね母と似た道を選んだ妹や、都内からマメに帰省してくれる弟に対し「不義理な娘なのでは」と自分を責めることもしばしありました。

ブリスベン市街で、私の勤務先や母好みのブリューワリーを案内し、自宅方面へのバスを二人で待っていた時。バスの遅延に持て余していたら、後ろに並んでいたオージーの母と同年代くらいの女性から声をかけられ、他愛無い世間話が始まりました。

「娘さんがここで幸せに暮らしているのを実際に見て、お母様も幸せでしょう」

母が今回来た経緯を話すと、そう穏やかな笑顔で母に語りかけました。
顔にハテナを浮かべながら私の顔を見る母。母に和訳しつつ、
「そうですね、その逆も然りで。母の幸せが私の幸せでもあって、相互に関係してるんですよね」と返しました。

普段使っているスーパーマーケット、シェルクラブの美味しいローカルな中華レストラン、フリーマーケットが並ぶ日曜市、冬の水鳥たちでにぎわう湖の散策路。私の生活圏をぐるぐると車で案内する中で、ふと母が
「子供たちは三者三様。お母さんはそれぞれの生活を体験できて楽しい」
と口にしたのでした。

オーストラリアの抜けるような空の青さや星の多さに感激したこと。朝、庭の木に虹色のオウムが飛んで来ていたこと。散歩ですれ違った近所の人と「ハロー」と挨拶を交わしたこと。買い物で困っていたらお店の人が教えてくれたこと。そんな「生活体験」が母にとっては新鮮だったようです。

「思い切って来てよかった!」と、帰りにブリスベン空港から送り出す間際まで繰り返し言ってくれ、私はようやく心の澱が落ちたような安堵感を覚えました。

「子の幸せが親の幸せ」とはよく言うけれど「私が選んだ幸せの形は、親に受け入れられているのか?」と私はどこかで確信が欲しかったのだと思います。実際にどんな生活をしているか見てみないと、特に海外だとどうしても向こうからは想像がつきづらく、LINEや電話をしても、コミュニュケーションが淡白になってしまうこともしばしありました。

なので今回、一念発起し海を渡って来てくれた母には本当に感謝しています。「物理的にはちょっと遠いけれど、心理的にはなんだ近いじゃん!」と思ってくれたならミッション達成、万々歳。東京ーブリスベン間は飛行機では9時間強かかるけど、実は時差はたったの1時間ですし。

「まだまだお母さん働くつもりだし、また来年も来ていい?」
オーストラリアのクラフトビールを味わいながら上機嫌で尋ねる母。
もちろん。次回は、今回仕事で来られなかった父も来てくれたらいいな。

Your happiness is my happiness.
Ayaka