社会人13年目の春(秋)ブリスベン川より

イースターホリデー最終日の祝日、私はブリスベンの現代美術館にいた。お目当ての企画展を見終え、午後の陽射しが差し込む全面ガラス張りのラウンジスペースからブリスベン川にかかる橋を眺めていた。

ソファに腰を下ろしスマホをに目を落とすと、SNSには友人知人のご子息・ご息女のフレッシュなスーツ姿が溢れていた。今日は4月1日、日本は新年度なのだと思い出した。

13年前のこの日に、私は富士山のよく見える静岡県三島市で社会人の第一歩を踏み出した。
教育出版業界で働きたいと願い、新卒で教育サービス企業に入社。ありがたいことに希望の教材編集部に配属された。研修最終日に新入社員全員で横一列に並び、順々に辞令を頂戴し「初めての上司」と対面した瞬間は今でも鮮明に覚えている

途中に社会人留学や紆余曲折を経つつ、今はブリスベンで米国の学術出版社の編集部門に身を置いている。個人的に、自転車や英語学習を分野で筆を取ることもある。業界も拠点も異なれどなんだかんだで、言葉を形に落とし込んで世に伝えるこの界隈が性分に合っているのだろう。

新人時代(その先もだが)の自分を思い返すと、顔から火が出る勢いで居たたまれない、恥ずかしいミスとやらかしばかりで嫌になる。
自分の至らなさや配慮のなさで、どれだけの人に負担と迷惑を掛けたかは数えきれず、今でも自分自身に呆れ返るような失敗談も数知れない。

それでも、その数々の失態も積み上げた先に今の自分があるのだと思うと、生意気で迷走しがちな小娘にお灸を据えてくれた先輩や上司はありがたい。海外拠点のグローバル企業にいざ身を置いてみて体感するのは、自分には日系企業の新卒で「ちゃんと教育された」慣習やマナーが(良くも悪くも)染み付いている、ということだから。

「海外で働く先輩社会人」的な枠
で、現役学生さん、社会人の方から訪問を受ける機会も増えた。が、私は「アドバイスをする」という行為はあまり得意というか好きではない。なんだかおこがましい気がしてしまって。あくまで「自分のケースはこうだった」という事例
を伝えるだけ。

だって皆、例え目指した場所があったとしても、実際のところ5年後、10年後どこで何をしているかなんて当の本人にも分からない。「結果的にここに辿り着いた」というケースがほとんどではないだろうか
世の中に絶対などなく常に移ろうように、社会との関わりの中で、自分の興味や感情も流動的なもの。希望通りの本流からスタートを切れっても思いがけず支流に出るかもしれない。支流から始まったとしても、気づいたら目指していた流れに合流するかもしれないし、想像以上の大海に出るかもしれない

今目の前の流れに精一杯舵を取りながら、でも同時に「今でさえも流動的なもの」と流れを俯瞰するような心持ち
でいられたら、この先もきっと面白い方へと漕いでいけるような気がした、秋の始まりの午後だった。

Life’s a river, Grab your paddle.
Ayaka