異国の地の大聖堂でジブリ・久石譲の音楽にふれる

先日ブリスベン市内にあるSt.John’s Cathedralへ、Candlenight: Best of Joe Hisaishi という演奏会を聴きに行ってきました。

St.John’s Cathedral(聖ジョンズ大聖堂)はCBD(シティ中心部)に現存する、文化遺産にも登録されている英国国教会の大聖堂。ゴシックリバイバル建築と木彫りの彫刻が美しい教会を、キャンドルで照らし、演奏会を楽しもうという企画です。

「もののけ姫(Princes Mononoke)」
「魔女の宅急便(Kiki’s Delivery Service)」
「隣のトトロ(My Neighbor Totoro)」
「ハウルの動く城(Howl’s Moving Castle)」
など数々の名作中の名曲が、チェロ・フルート・ハープからなる三重奏で奏でられました。

久石譲さんのジブリ音楽は言うまでもなく秀逸で、目を閉じて耳をすませば各作品のシーンが自然と瞼の裏に浮かび上がるのでした。

それと同時に、
「あぁ、小学校の鼓笛隊でやったな」
「これはピアノのレッスンでやった」
「中学の吹奏楽部で」
・・・と、自然と曲と共に当時の演奏経験や思い出が蘇ってきました。

何より自分でも驚いたのは、小学校高学年の時に祖父母がジブリ音楽が流れる目覚まし時計を買ってくれたのを実に20年ぶりに思い出したことです。
4曲ある目覚まし音の中から「海の見える街」を好んで選んでいたと記憶がフラッシュバックし、今は亡き祖父、地元の高齢者施設で暮らす祖母に思いを馳せたのでした

会場には老若男女、そしてオーストラリアらしく多人種なさまざまな顔ぶれが見られました。司会者・演奏者の解説(英語)もとても丁寧でスタジオジブリ・久石譲作品への愛に満ちていました。
演者側も、聞き手側も、きっと一人一人、一曲一曲ごとに「ジブリ・久石譲の音楽体験」があるのでしょう。
一曲演奏が終わるごとに聖堂は高い高い天井まで響き渡る、いっぱいの拍手で満たされました。
ジブリ・久石譲さんの作品は多くの人にとって人生の1ページになっていて、人種・国籍を超え世界中で愛されているのだと身をもって感じるばかりでした。

それにしてもクラシカルな大聖堂の音響は、音楽ホールのそれとは一味も二味も違いました。
楽器から空中に放たれた音がシャボン玉のように浮遊し、ゆっくりと円形の天井へと上がっていくような。
「音のシャワー」と言うより、音符にあふれた水槽の中で自分自身がくらげのように浮遊している感覚でした。

最新のノイズキャンセリングイヤホン・空間オーディオ技術がどれだけ発達しても、やはり「全身で生の音を浴びる」この体験は圧倒的です。
メールやチャットといったデジタルツールの発達の傍ら、手紙は廃れるのではなくむしろ付加価値が高まったのと同じで、「演奏会・ライブ」という生の音楽体験の価値も今後もっと高まっていくのでしょう。

そんなのもうとっくにどこかで誰かが論じているよなと思いながらも、自分の身をもってそれを知ることで、またお金・時間の使い方って変わってくるんだろうなと考えた、ブリスベンの春の夜なのでした。

Enrich your mind and soul with luxurious music experience.
Ayaka